印刷関連ユニオン結成宣言

 今日ここに私たちは全国印刷関連ユニオンを結成する。1953年結成の全印総連は永きに渡り印刷労働者の生活と権利を守る闘いを進めてきたが、その主体は企業別組合で構成する総連合会であった。総連合会の中に個人加盟の全国ユニオンを建設することは容易なことではない。幾多の議論・挫折・紆余曲折を経て新たな地平を切り開いた先人たちの努力に感謝したい。

 印刷産業は大日本印刷と凸版印刷の二大グローバルガリバー企業の双璧の下、事業所数の99.8%が従業員数300人未満、90%が30人未満の中小零細企業がひしめく中、30万の労働者が日々低賃金で無権利な環境で働いている。しかし労働組合に組織される労働者は4万人強に過ぎない。零細企業に働く労働者や大手中堅の非正規労働者は、歪んだ産業構造の中で分断された未組織の大海に浮遊している。この環境下で個人加盟の全国印刷関連ユニオンの結成を成し遂げた事の歴史的意義は大きい。

 私たちは産業民主主義の確立を唱えている。産業民主主義とは労働者が集団的に労働基本権を行使して、権力や資本の搾取・抑圧・横暴を規制する具体的な力である。その力を具体化するには25万印刷未組織労働者を迎え入れ労働者と労働組合の産業に対する発言力を高める以外に方途はない。企業の外に個人で加盟できる全国ユニオンを建設することはその具体化の第一歩だ。

 世界でも類まれな人民憲章である日本国憲法は、第28条で唯一労働組合にだけ集団的な行動権を明文化し保証している。団結権・団体交渉権・ストライキ権の労働三権である。これは労働組合が翼賛体制に与して無謀な侵略戦争を招いた歴史的な教訓から労働組合の社会的な抵抗権を憲法で保証したものだ。この労働者固有の権利は1944年フィラデルフィア宣言で高らかにうたわれた「労働は商品ではない」の精神に通じている。フィラデルフィア宣言もまたファシズムとの闘いと通じて得られた世界で共有する貴重な到達点だ。

 「戦争と革命の世紀」と言われた20世紀は、資本主義が高度に発達し同時に腐敗した世紀であった。今人類は「人新世の紀代」と呼ばれる21世紀に、新型コロナウイルスとの熾烈な戦いを地球規模で展開している。資本主義はグーデンベルグ活版印刷発明から18世紀産業革命のエネルギー革命を起点とした。今急激に進む「情報革命」はインターネットというもう一つの世界を作り出し世界を瞬く間に一つにしようとしている。、私たち印刷産業が生業として取り組む情報の伝達・保存はこの大変革の中枢に位置する産業だ。資本主義の腐敗が生み出した雇用の破壊・格差と貧困の拡大は、新型コロナウイルス対応のテレワーク推奨と官製の「働き方改革」が相乗して、そもそも労働基準法適用外の無権利な奴隷的労働を拡大しようとしている。全国印刷関連ユニオンが産業に大きく翼を広げ産業民主主義を運動として展開する事が希求される。

 1982年オランダでのワッセナー合意以来、30年を経て日本でもようやく「同一労働同一賃金」が法規制された。しかし概念としての規制は、それを産業・職場で具体化する労働者・労働組合の日々の目に見えた取り組みが蓄積されない限り実現しない。いまこそ「労働は商品ではない」と高く高く掲げよう。その先頭となる私たちの砦として全国印刷関連ユニオンを大きく大きく育てよう。今日の結成が印刷労働者の記念日となるように。労働者に光あれ。

2021年7月3日