大会宣言

全印総連第72回定期全国大会


 全印総連は、本日、滋賀県大津の地で第72回定期全国大会を開催し、全国各地の仲間がリアルに、あるいはオンラインにつないで集まり、一年間の闘いの総括と今後の全印総連の闘いのあり方を討議し、新たな運動方針を確立した。
 いま、世界的なインフレ・物価高の波に加えて、「アベノミクス」の異次元金融緩和がもたらす円安が、エネルギーや食品、生活財を輸入に頼る暮らしを直撃している。岸田政権は発足時、行き過ぎた新自由主義の弊害を認め、「成長と分配」を掲げたが、いつしか分配戦略は鳴りを潜め、「所得資産倍増」にすり替わった。各国ではコロナ禍において消費税減税や最低賃金の大幅引き上げが行われているが、日本政府は消費税減税に抵抗し、6月7日に発表した「新しい資本主義の実行計画」の最低賃金引上げ目標は、2025年度に平均時給1000円と極めて低額だ。家計からは搾り取る一方、コロナ禍でも増え続ける466兆円という史上最高額の大企業の内部留保や金融資産への課税には背を向けている。
 国民の暮らしを中心にした経済への転換、そして、生活を守る賃金闘争をより強固に進めることが必要だ。全印総連のなかまの連帯を固くし、ストライキを含む闘いを組織し、大幅賃上げ、一時金の獲得をめざそう。国が強制力をもって不当な低賃金の改善をはかる最低賃金制度は、不景気であれば一層重要だ。中小零細企業の支援策とあわせて、最低賃金の全国一律制、時給1500円以上の声を広げよう。
 改正育児休業法やパワハラ防止法など、この間の法改正が職場に適用される一方で、労働者の生活と切り離された労働条件もはびこっている。大手製本現場では、シフト制の濫用が生活を脅かし、非正規格差の是正を求める団体交渉が進められている。厚労省で検討されている解雇の金銭解決制度は、不当な解雇を免罪するものであり、使い捨て雇用を許すわけにはいかない。
 全印総連は、昨年7月に個人加盟の産別組織・印刷関連ユニオンを結成し、労働組合に未加入の大勢の労働者とつながることを試みながら、働く者の権利を守り、安全で働き続けられる産業をめざして闘ってきた。この1年、労働相談を通じて新しい仲間を迎えたが、他方では組織の離脱と消滅を経験した。いま、デジタルコンテンツの新たな市場や政府が進めるデジタル改革(DX)が産業再編をうながしている。その影響は労働条件にも及びかねない。全印総連の方針と闘いを、多くの職場に伝え、困難を抱える労働者とつながり、ともに要求実現に立ち上がる仲間をつくろう。
 コード社「コロナ禍雇止め撤回」争議が6月15日に最終審問を終え、9月7日に判決が出される。この間、京都で勝利判決をめざす市民集会を1月30日に開催し、「公正な裁判を求める団体署名」は296筆を提出した。裁判で会社は原告を会社の名誉棄損で反訴するなど卑劣で不誠実な態度をとっている。コロナ禍で切り捨てられた有期契約労働者の権利回復と、労働者の尊厳を高く掲げ、この裁判に勝利しよう。すべての争議の早期解決をめざしていこう。
 印刷市場の退潮は続いている。イベントなど集客制限が緩和されても、生活やビジネスに広がったネットへの展開は止まらない。加えて、インキ、資材費の価格上昇や用紙代の度重なる値上げ、エネルギー費の高騰が収益にのしかかる。全印総連は1月に、公正な取引と適正価格を求める価格転嫁アピールを発表した。その切実さはさらに深まっている。
 産業対策委員会で進めている『全印総連 産業政策提言』の改訂作業では、コロナ禍で大きく進んだデジタル社会やポストコロナの変化を職場から情報共有し、紙メディアの可能性が議論された。『提言』の主要テーマである公契約条例制定は、指針を除き27地方75自治体に広がっている。低価格競争の歯止めが期待される最低制限価格制度の本格導入が東京都の官公需印刷で今年度からはじまった。持続可能な職場や産業の発展をめざし、職場の実態を踏まえた未来につながる『提言』をつくろう。
 改憲を掲げる与党自民党とその推進役の維新らは、ロシア・プーチン政権のウクライナへの軍事侵略を契機に、「憲法改正」と防衛費を2倍化し専守防衛を乗り越える「大軍拡」を声高に主張し、敵基地攻撃能力や核共有・核配備を容認する危険な動きに出ている。私たちはあらためて、日本国憲法前文の平和主義の決意にたち、ロシアのウクライナ侵略戦争反対、ロシア軍の即時撤退を求めるとともに、9条改憲を許さず、核兵器廃絶を求めて闘う。
 7月10日投票で行われている参議院選挙は日本の針路が問われている。一人ひとりが要求を実現する政策に基づく選択をし、戦争反対、憲法改悪を許さない、いのちと暮らしを守る意思を示し投票しよう。
 全労連やMICの仲間と連帯し、働くルールとまともな雇用を職場に確立させ、ジェンダー平等と雇用格差の是正、言論・表現の自由を掲げ、働く者の権利と人権、平和と民主主義社会を守る闘いを進めよう。
 第72回定期全国大会で議論し確認した方針に基づいて、要求に固く団結し、教訓と課題をそれぞれの組合に持ち帰って、職場と地域、産業を変える新たな闘いを歩み出そう。
右、宣言する。


2022年7月2日
全印総連 第72回定期全国大会